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4月の演奏会コースのピアノ曲

春の嵐で暴風雨です。
博物館の窓にも雨が激しく打ちつけて、なんだか不安になります。
今日は電車が止まりそうなので、4時半に閉館させていただきました。

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4月1日から演奏会コースで演奏するピアノ曲をご紹介します。
1920年当時のピアニストの演奏を再現演する自動演奏ピアノ、スタインウェイ・デュオアートが演奏します。
 
 
ファイル 453-2.gif エドヴァルド・ハーゲルップ・グリーグ
 
グリーグ*1作曲のペール・ギュント 第1組曲 作品46より 3.アニトラの踊りです。
 

ファイル 453-3.gif ヘンリック・イプセン

イプセン*2の戯曲「ペール・ギュント*3」の付随音楽として誕生。

付随音楽はオペラとは違い、劇の台本や進行に合わせ作曲された音楽で、劇や芝居を盛り上げ、様々な効果を作り出すために創作された音楽です。

演奏は、後にグリーグが管弦楽のため、この音楽の中から4曲ずつを選び、作品46と作品55の2つの組曲に改作したうちのひとつ、作品46の第3曲です。
劇の中では「アニトラの踊り」はペール・ギュントが砂漠のオアシスを訪れたとき、族長の娘アニトラと踊子達が歌い踊る場面で流れます。
 
 
ファイル 453-4.gif パーシー・グレインジャー

演奏はパーシー・グレインジャー*4
グレンジャーは自動演奏機械の開発に晩年を捧げた、異色のピアニスト。
彼が開発した電気楽器「フリーミュージック・マシーン」は伝統的な音階・拍子・和声から解放された「フリー・ミュージック」を奏でる自動演奏機械。
グレインジャーは若い頃から「鳥の飛翔のような旋律、大洋の海のようなリズム、夕暮れの空のような和声」を音楽の理想と考え、四本の紙のロールの形状にしたがって上下するバーが発振器の抵抗値を変え、スピーカーから音が出る仕組みの機械を試作していたそうです。

今回は注釈が多くなりましたが、興味のあるところだけお読み下さいませ。

つまり、ヴィルトゥオーゾ*5のグレインジャーが弾く『アニトラの踊り』は、官能的で妖艶で、どんどんと演奏に引き込まれていく魅力に溢れています。
 
 
 
 
 

ファイル 453-5.gif ペール・ギュント (ヘンリク・クラウゼン演ずるペール 1876年)

*1:エドヴァルド・ハーゲルップ・グリーグ:Edvard Hagerup Grieg、1843年6月15日 - 1907年9月4日。ノルウェーの作曲家。生前から世界的な名声を博した。グリーグはとても小柄であったが、生前は卓越したテクニックのピアニストとしても著名で、自作を携えヨーロッパをたびたび演奏旅行している。当時注目する人もいなかったノルウェーの民俗音楽を取り上げ、洗練させることにより、ノルウェー独自の文化を確立。国民楽派の作曲家として注目された。彼の肖像は旧500クローネ紙幣に描かれていた。
*2:ヘンリック・イプセン:Henrik Johan Ibsen 1828年3月20日 - 1906年5月23日 ノルウェーの劇作家、詩人、舞台監督。近代演劇の創始者であり、「近代演劇の父」と称される。シェイクスピア以後、世界でもっとも盛んに上演されている劇作家とも言われる。
*3:ペール・ギュント:自由奔放なペールギュントが旅に出て年老いて帰ってくるまでの物語。全5幕。落ちぶれた豪農の息子で、母と共に暮らしている夢見がちな男ペール・ギュントは、かつての恋人イングリを結婚式から奪取して逃亡する。しかしイングリに飽きたら彼女を捨て、トロルの娘と婚礼寸前まで行くが逃げ出す。純情な女ソルヴェイと恋に落ちるが、彼女を待たせたまま放浪の旅に出る。山師のようなことをやって金を儲けては無一文になったり、精神病院で皇帝になったり遍歴した後に老いて帰郷する。死を意識しながら故郷を散策していると、ボタン職人と出会うが、彼は天国に行くような大の善人でもなく地獄に行くほどの大悪党でもない「中庸」の人間をボタンに溶かし込む役割の職人だった。「末路がボタン」というのだけは御免だと、ペール・ギュントは善悪を問わず自分が中庸ではなかったことを証明しようと駆けずり回るが、トロルの王も「やせた男」もそれを証明してくれなかった。彼は最後の証人として会ったソルヴェイに子守唄を歌ってもらいながら永眠する。
*4:パーシー・オルドリッジ・グレインジャー: Percy Aldridge Grainger, 1882年7月8日 - 1961年2月20日 オーストラリア、メルボルンに生まれ、ドイツに学び、英米を拠点に活躍した往年のヴィルトゥオーゾ・ピアニスト。英国・北欧民謡の採集家で、古楽の研究も行ない、各種の編曲も手懸けた作曲家。
*5:ヴィルトゥオーソ:完璧な演奏技巧によって困難をやすやすと克服することのできる、卓越した演奏能力の持ち主に対する称賛の言葉