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君の髪が白くなっても

今日11月22日といえば「いい夫婦」の日などといわれます。
たんなる語呂合わせ?

今日は「いい夫婦」の日なので、「君の髪が白くなっても」というタイトルの曲をご紹介します。

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若い頃、ディスクの中にこの曲を見つけたときは、「髪が白くなるまで」っていうのは、ずっと先のことでお互いが老人になるまでと思っていましたが、老人にならなくても、髪は白くなってしまうもの。
白髪を発見する度にこの曲を思い出します。

この曲はイギリスのシンガーソングライターのハリー・ダクレが1890年に作曲しました。
ダクレといえば、世界で初めてコンピュータが歌った歌「デイジー・ベル」を作曲したことで有名です。
デイジー・ベルは『2001年宇宙の旅』にも登場し、コンピューターのHAL 9000が歌って、更に有名になりました。

「君の髪が白くなっても」は現代では歌われていないようですが、当時は人気の曲だったのでしょう。
自動オルガンやディスク・オルゴールに収録されています。

さて、歌詞をネットからやっと捜して、試聴ページも作り、
「君の髪が白くなる程、私はあなたを愛す」という歌詞。
あれ?
マザーって?
えーー
夫婦が仲良く老いていくという歌詞ではないの?
ここまで書いたのに…、もしかして、お母さんへ捧げる歌?
歌詞なんて調べなきゃ良かった・・・。

折角試聴のページを作りましたので、お暇な方、どーぞ。
(ちょっと投げやり)

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演奏は1890年代製造のドイツ、ポリフォン104です。

「君の髪が白くなっても」の試聴 新しいウィンドウで開きます。

音楽入り時計

雑誌を読んでいたらブレゲ クラシック "ミュージカル”という時計が紹介されていました。

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「伝統的なオルゴールのシリンダーではなく、ピンを備えた回転ディスクが 15 本の金属製の櫛歯を弾く…」
腕時計のなかにディスクが組み込まれているそうです。
実物を見てみたい!聞いてみたい!と思いますが、900万円以上もする時計。
お店に行って気軽に「見せて下さい」なんて言える気がしません。

そこでネットで動画のページを探しました。

このようなディスクを用いた時計。
腕時計ではありませんが、実は200年程前にも作られていました。
博物館の所蔵品、1820年頃、オーストリアで作られた音楽(オルゴール)入り置き時計です。
円盤(ディスク)に付いた突起が音楽信号となって、この突起が一本一本ネジ止めされた23本の櫛歯を弾いて演奏します。
YouTubeに動画をアップしていますので、ご紹介します。

オルゴールの起源とも言われている音楽入り時計。
人々が求める究極の贅沢なのかもしれません。

ディスク盤のこと

オルゴールのディスク盤。
上から見ると孔があいています。

上から強い光が当っていたりすると、影が星座のように見えて綺麗です。

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しかし孔があいているだけではなく、通常は裏に突起があります。

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ディスク・オルゴールはこの裏の突起がスターホイールの歯に掛かりスターホイールを回転させ、その時スターホイールの他方の歯が櫛歯を弾いて音をだします。

突起をアップで見ると、平仮名の「つ」みたいな形をしています。

ファイル 531-2.gif ポリフォン 19 5/8インチの突起

実はこれ、わざわざつけた形ではないのだそうです。
缶の蓋を開けたときなど、金属を切ると丸まってしまうのを見たことはありませんか?
ディスクの突起の形状は、孔を開ける工具やディスクの質によって決まるのだそうです。

そのため突起の形はメーカやサイズによって異なります。

ファイル 531-3.gif ミラ 18 1/2インチの突起

ファイル 531-4.gif シンフォニオン 14インチの突起

オルゴールを演奏するための大事なディスクについて・・・。
追ってご紹介していきたいと思います。

アンティーク・オルゴールの販売店

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テーブルタイプでは珍しいコインを入れると演奏するオルゴールです。
アメリカのシンフォニオン社が製作しました。
通常コインで動くものは縦型の大きなものが多く、お店に置いても見栄えが良いようになっているのですが・・・。
小さな狭いお店用に作られたのでしょうか?
このオルゴールの上蓋を開けると、蓋の裏に何やら印刷された紙が貼ってあります。

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そこには以下のことが書かれています。

  •  5セントを投入してください。
  •  このシンフォニオンは、取り替え用のメタルシートにより5000曲以上を演奏出来ます。
  •  コインオペレートがついていない家庭用のものは『W.J. Dyer & Bro., St. Paul, Minn.』で販売しています。
  •  使用方法(音楽ディスクの交換について) 機械上のバーを持ち上げる。センターピンにチューンシートをあわせる。ホルダーを下げ、しっかりとその位置に固定されているかを確認する。
  •  注意:櫛歯や機械には触れないように!

どうやらこのオルゴールは家庭用のテーブルタイプを販売するために宣伝用として作られたようです。
印刷部分のオルゴールの販売店のところは空白になっています。
各販売店は、手書きで自分のお店の名前を書いて、人気のお店にオルゴールを置いてもらっていたのでしょうか。
テレビなどの無い時代、今まで見たことのないオルゴールを売るための、まさに実演販売ですね。

このオルゴールには『W.J. Dyer & Bro., St. Paul, Minn』という店名が書かれています。
実はこのお店、ネットで検索したら出てきました。
アメリカ、ミネソタ州ミネアポリス、セントポールにある楽器小売店だそうです。
1855-1868年にボストンで開業し、1869-1882年にミネソタ州のマンケートに、1882年にセントポールに移りDyer & Howardと改名。
1885年にはW.H. Dyer and Broと改名し、1941年まで営業していた。という記録もありました。

当時のお店の風景の写真もあったのですが、著作権があるようなので、掲載されたサイトをご紹介します。
100年前のオルゴールがどんなお店で売られていたのかが良く分る楽しい発見でした。

『W.J. Dyer & Bro., St. Paul, Minn』写真   新しいウィンドウで開きます。
 

今日はドビュシーのお誕生日

今日8月22日はドビュッシーの150回目の誕生日です。

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クロード・アシル・ドビュッシー(Claude Achille Debussy, 1862年8月22日 - 1918年3月25日)は19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスを代表する作曲家です。
「月の光」や交響詩「海」などの作品で知られています。

今日はドビュシーのお誕生日なので、博物館5Fの自動演奏ピアノでドビュシー作曲の『風変わりなラヴィーヌ将軍』という一風変わった曲を録画し、YouTubeにアップしてみました。

ファイル 512-2.gif Eugen Francis Charles D'Albert (1864-1932)

演奏はオイゲン ダルベール。
主にドイツで活躍したピアニスト・作曲家。ドイツに帰化し、第一次大戦中に自らをドイツ人と宣言。
名ピアニストとして演奏と録音の両面で活躍し、恩師リストのピアノ曲をレコードやピアノロールに多く録音したようです。
力強く情感細やかな演奏によって、ウィーン・デビューを聴いたブラームスを震撼させたと伝えられています。
 
 

さてこの曲のタイトルに用いられている「ラヴィーヌ将軍」。
1910年に「マリニー劇場」でデビューしたアメリカ生まれの喜劇手品師なんだそうです。
もともと背が高く、つんつるてんの軍服を着てぎくしゃく踊るために、2m75cmぐらいあるような大男の印象を与えたといいいます。
画家リュック=アルベール・モローが「ナポレオンのような帽子をかぶり、肩章のついた軍服を着て腰からサーベルを吊るした芸人がニコニコ笑いながら三つの玉でお手玉をやっている」ラヴィーヌ将軍のデッサンを残しているようです。

ドビュッシーは、大衆演劇が大好きだったといわれ、ロートレックも常連だったというロワイヤル通りのカフェ「レノルズ」に通いつめていたとのこと。
シャンゼリゼ大通りの「マリニー劇場」の支配人からは、「ラヴィーヌ将軍 生涯兵役についていた人物」という出し物の伴奏音楽を依頼されたようです
前奏曲集第二巻』の第六曲「風変わりなラヴィーヌ将軍」はショーの伴奏音楽ではないようですが、ラヴィーヌ将軍を彷彿とさせる?ちょっと楽しい音楽です。

シリンダー アレンジ 聞き比べ

オルゴールの魅力のひとつに「アレンジ」があります。
当時は各オルゴール・メーカーにアレンジのプロがいたようで、とても高給取りだったとか。
シリンダー1回転、ディスク1枚に長い曲をいかに収めるかはアレンジャーの腕の見せ所。
いくつかオルゴールを聴いていると、同じ曲でも全く異なるアレンジのオルゴールに出会います。
更に原曲と比べるてみると、工夫された編曲の面白さが倍増します。

ベッリーニのオペラ 「ノルマ」のなかの一曲、”この子たちを連れて行って”をお聴き下さい。
まずは原曲から。(YouTubeの前半の曲です。)


 
 
 
 
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次はベル付のオルゴールですが、ベル無しの録音で。
右上図はチューンシートと呼ばれる曲目が書かれたシートです。
このシートによりメーカーが分る場合もあるのですが、途中で誰かが貼り替えている場合もあるので、断定はできません。
多分ペイラード社のオルゴールで1870年頃、10曲入りの10曲目です。

「ノルマ」より この子たちを連れて行って 演奏:ペイラード(多分) 新しいウィンドウで開きます。
 
 
 
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次はニコール・フレール社のピアノ・フォルテです。
1860年頃のオルゴールで、フォルテ用の大きな櫛歯とピアノ用の小さな櫛歯を持ち、強弱をつけて演奏します。
6曲入りのオルゴールの4曲目です。

「ノルマ」より この子たちを連れて行って 演奏:ニコール・フレール ピアノ・フォルテ 新しいウィンドウで開きます。
 
 

音楽再生装置として活躍していた時代のオルゴール。
知れば知るほど新しい発見があって、ほんとに楽しいです!

ミュージカル・スナッフボックスの絵

1835年頃、スイス製のミュージカル・スナッフ・ボックスです。
スナッフ・ボックスとは微粉末状にしたたばこを直接鼻から吸う「嗅ぎたばこ(スナッフ)」を入れる箱のこと。
メーカーは不詳。

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5本組の櫛歯が13枚と何故か6本組の櫛歯が1枚が音程順にならびネジで止められています。
まだ一枚の板から何本もの歯を削り出す技術が難しかった時代には幾枚もの小さな櫛歯を用いていました。
このような櫛歯はセクショナル・コム(組み合わせ櫛歯)と呼ばれています。

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箱の全面にマザーパールの2つの操作ボタンがあり、左がスタート・ボタン、右が曲目変換ボタンになっています。
右のボタンを左右に動かすことで、2曲入りのオルゴールの演奏したい曲を選べます。

さて、このオルゴールのケースは水牛の角を加工した素材で作られています。
これはプレスドホーン(Pressed Horn)と呼ばれていて、動物の角の柔らかい層を熱で柔らかくし、型に入れて成形した素材。
17世紀ぐらいからあり、スナッフボックスとしては1700年頃には作られていたという記録があるようです。
(その頃のスナッフボックスにはオルゴールはついていませんが・・・)
漆黒のケースの上蓋には風景と[Porte Ficinese a Milan]の文字が彫刻されています。
YouTubeに動画をアップする際に録画をしていて、今更ですがこの絵のことがとても気になりました。

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[Porte Ficinese a Milan]とはミラノのティチネーゼ門のこと。
オルゴールにはFicineseとありますが、現在はTicineseと表記するようです。
1901年に撮影されたティチネーゼ門。
当たり前かもしれませんが、なんと同じ絵で嬉しくなってしまいました。

ファイル 490-4.gif Porta Ticinese nel 1901

更にGoogle Earthで調べてみると、現在のティチネーゼ門です。

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オルゴールが作られて約180年。
現在も街のなかに当時描かれていたものが普通にあるのがヨーロッパの凄いところですね。
いつかイタリア、ミラノを訪れる機会があったら、絶対に見に行こうと心に決めた今日この頃です。

このオルゴールは現在「暮らしのなかのオルゴール展」で実演中です。
大塩平八郎の乱が1837年、そんな時代に作られたオルゴールの実際の音色が楽しめます。
是非ぜひ聞きにいらしてくださいませ。

YouTubeではこちら。

トップページのミュージックを更新しました。

トップページの右側にあるメニュー『Music』の曲目を更新しました。

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来月の母の日にちなんでタイトルにお母さんがついている曲を探してみました。
Weißt du, Mutterl, was i träumt habという曲。
訳すと「母さん、あなたが私の夢を知っているならば」という題名のようです。
 
 
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演奏は1890年代ドイツのポリフォン社のオルゴールです。
ポリフォン社は1887年にドイツで創業したディスク・オルゴールの会社です。
急速に社業を発展させ、従業員が1000人に達する大会社になりますが、1914年第一次世界大戦勃発の年にオルゴールのビジネスを終了します。

当時、ポリフォン社は直径6 1/2inchから32inchまで14種類のサイズのディスクを販売していたそうですが、今回演奏しているディスクは15 1/2インチ。
コインを入れると演奏する営業用のオルゴールで、ポリオフォン スタイル103という製品名がつけられています。

ファイル 458-3.gif ポリフォン スタイル104(19 5/8インチのディスク使用)
ファイル 458-4.gif ポリフォン スタイル105(24 1/2インチのディスク使用)

ポリフォン社の営業用のオルゴールにはスタイル103の他に104と105があります。
勝手にポリフォン3兄弟と呼んでいますが、博物館にある3兄弟はすべて1ペニー(当時のイギリスのコイン)で動きます。

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当時イギリスでディスクオルゴールが人気で、ドイツ製のオルゴールの多くがイギリスに輸出されていたようです。
20センチ以上もディスクのサイズが異なると、音域や演奏時間も異なり、同じ料金で1曲じゃ腑に落ちない感じがします。
そのために?ポリフォン社の営業用のオルゴールにはコイン1枚で1回転演奏するか2回転演奏するかを選択できる機構がついています。
ちなみに博物館のポリフォンは104と105はコイン1枚で1回転、103はコイン1枚で2回転演奏するにセットしてあります。

オルゴールのあまり知られることのない機構です。
 
 
ポリフォンで製造されたディスクのサイズ

センチインチ備考
16.5cm6 1/2inchオルゴール用
20.7cm8 1/4inchオルゴール用
24.3cm9 1/2inchオルゴール用
24.6cm9 3/4inch オルゴール用
28.1cm11 1/4inchオルゴール用
36.0cm14 1/2inchオルゴール用
39.8cm15 1/2inchオルゴール用
45.0cm17 1/2inchベル付きオルゴール用
50.0cm19 5/8inchオルゴール用
56.0cm22 1/2inchオルゴール用
62.5cm24 1/2inchオルゴール用
63.0cm25 1/4inchオーケストリオンや自動ピアノ用
71.0cm28inchオーケストリオンや自動ピアノ用
80.0cm32inchオーケストリオンや自動ピアノ用

ミュージカル出演者が支援オークション

1月10日のサンケイスポーツ 、1月11日の毎日新聞に「宮本亜門、百数十万円の自動ピアノを出品」「<東日本大震災>ミュージカル出演者が支援オークション」という記事をみつけました。
(各新聞の名前をクリックすると、記事のページが開きます。)

東日本大震災の被災地支援のため、チャリティーオークションが開かれるそうです。
そのオークションに演出家、宮本亜門さんが、百数十万円の自動ピアノを出品したとありました。

オークション関連ページ 新しいウィンドウで開きます。

見てみると、ピアノはニッケルオデオン(ニケロディオン・ニコロデオン)と呼ばれる自動ピアノでした。

ファイル 432-1.gif (博物館のニケロディオン)

5セントのコインを入ると演奏する営業用の自動ピアノで、シロフォン・カスタネット・タンバリン・ドラムなどが組み込れていて、賑やかな演奏を披露してくれます。

ファイル 432-2.gif (博物館のニケロディオン内部)

実は1940年頃にアメリカで作られたコイン・オペレート方式の自動ピアノ、オーケストリオン、その他類似の機種は、総称してニッケルオデオンと呼ばれているのですが、製作された当時には使われていなかった言葉です。
ニッケルオデオンとは主に1903-1914年頃に5セント(ニッケル硬貨)の入場料を請求した初期の劇場を意味するのですが、5セントで動く自動楽器をコレクター達がそう呼ぶようになったのでしょう。
今日では一般的に使われるようになりました。

博物館のニケロディオン(ホールに置いてあるもの)の動画をYouTubeでアップしていますので、よろしければ

櫛歯の作り方

スイスの高級オルゴールといえば、リュージュ社。

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その日本代理店がリュージュ販売株式会社です。
昨年の暮れにリュージュ販売さんからシリンダーの部品を貸してもらいました。
9月に行われていた『2011オルゴールフェスティバル(日本橋三越)』で展示されていたのを羨ましそうに見ていたら貸してくれました。

今日はその中から「櫛歯*1の作り方」を紹介します。

ファイル 431-2.gif (裏から見たところです。)

左から製造過程順に並んでいます。

一番左は形成されたスチール(鋼鉄)の板です。櫛歯を固定するためのネジ止め用のアナと、オモリを付けるための台などが形成されています。

左から2番目は切り込みを入れたところ。
櫛歯の1本1本が音を出し、長い方が低い音、短い方が高い音となります。
櫛歯はピアノのようにドレミファと順番に並んでいるのではなく、曲によって配列が異なります。
切り目を入れ長さがを替えていますが、この段階では調律は完了していません。

左から3番目は焼入(やきいれ)をしたところ。
画像ではわかりにくいのですが、色が黒っぽくなっています。
切り目を入れた櫛歯を800度の釜に入れ、その後常温の油に浸けて急冷させることを繰り返すのが焼入です。
焼入を行うことで硬度が増し、繊細な音色の基になるそうです。
焼入が終わったら研磨します。
 
 

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左から4番目、何かがモコッとついています。
重厚な低音を出すためと、調律がしやすいようにつけた鉛です。

 
 
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左から5番目、その鉛を研磨して、一本ずつの音程を決定した後、ダンパーとなる透明な樹脂を貼り付けます。
櫛歯は一度弾かれると振動を続けますが、振動中の歯に金属のピンが触れると、ジッという雑音(ダンパーノイズ)が生じます。
まずダンパーがシリンダーのピンに押し上げられ櫛歯の振動を止め、その後、櫛歯が弾かれる仕組みです。

 
 
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左から6番目が完成した櫛歯です。
ダンパーを櫛歯の長さに合わせて切りそろえます。

オルゴールにセットされているときは見えないので、様々に工夫された櫛歯の裏を見て驚く方が多くいらっしゃいます。
1796年、金属の棒を弾いて音を出すオルゴールが誕生して以来、改良が重ねられて1830年代には既に櫛歯の性能は頂点に達していたように思えます。

現在、公開中の1840年頃に作られたエクスプレッシヴ・シリンダーが鳴り出すと、ドーンという低音に驚かされます。

*1:櫛歯:オルゴールの音源となる部分。鋼鉄の板に切り目を入れ、調律して製作する。髪をとかす櫛に形状が似ているためにこの名が付いた。

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