オルゴールの小さな博物館
 
 


オルゴールが誕生するまで

 
 

カリヨン塔

 時計が発明されていない中世ヨーロッパの人達は、教会の鐘の音で時間を知ることができました。高い塔の上に鐘を取り付けて、「ノートルダムの鐘」で知られるように鐘突男が、主に朝と夕方と夜の3回、塔の上に登ってゆき、鐘を鳴らして時間を知らせていました。この鐘は当初四つ鐘を使っていたため、「四個の組み鐘」を意味するラテン語がもとになり、「カリヨン」と名付けられました。

 今から約650年前に、現在の私たちの身の回りにある時計のもとになる機械式の時計が誕生しました。この当時の時計はとても大きく機械の部分だけでも数メートルもあったといわれています。

 最も古いカリヨン付の塔時計は、1352年にストラスブルク教会に作られたものといわれています。その後時計塔の鐘を自動的に鳴らす仕組みが考案されます。その仕組みは木の大きな筒(バレル)に打ち込まれたピンが木の棒(キー)を押し上げます。木の棒にはロープが結ばれていて、ロープは塔の上の鐘をたたくハンマーと繋がり、自動的に鐘を鳴らすのです。1381年にブリュッセルの聖ニコラス教会の時計塔に付けられたカリヨン時計が最初の自動で演奏する装置といわれています。そして、このカリヨンこそがオルゴールの起源なのです。
カリヨンのしくみ


音楽時計

 1500年頃、ドイツのニュールンベルグの時計師ペーター・ヘンラインがゼンマイを発明します。すると時計技術が急速に進歩し、置時計や懐中時計などの小さな時計の製作が可能になります。時計が小さくなるに従い、そこに組み込まれた音源となる鐘はベルになり、やがて金属の棒となって音楽を奏でるようになるのです。この金属の棒を弾いて音楽を演奏する機構がオルゴール誕生のきっかけとなります。

 1796年にスイスのアントワーヌ・ファーブルによって製作されたものが、世界で最初のオルゴールといわれています。ミュージカル・フォブ、ミュージカル・シールと呼ばれています。シールとは当時の貴族が腰から下げて持ち歩いた家紋などが刻まれた3センチ程度の小さな印章です。またそのシールや時計をしまうズボンの小さなポケットのことをフォブといいます。世界初のオルゴールは小さなアクセサリーに組み込まれました。このとき初めてオルゴールは時計から独立し、音楽を聴く道具としての一歩を歩み始めたのです。しかし、この時代の音源は、現在のような金属の板に刻み目をいれた櫛歯ではなく、各々調律した数本の棒を台座に一本一本ネジ止めしたものでした。この為単純なメロディを奏でるのが精一杯でした。

(注:前述したとおり、スイスより時計作りが盛んなフランス等では、金属の棒を弾いて音楽を演奏する方法は時報を鳴らす技術として既に採用されていたようです。しかし、ファーブルはジュネーブ科学協会に書類とし提出ていたため、「オルゴールを最初に作った国」という栄誉はスイスのものとなりました。)

ミュージカルシール

 

 1812年、ナポレオンのロシア遠征、1813年のプロシャとの戦争などが影響し、フランスの時計職人達は戦火を逃れてフランス国境に近いスイスに移り住んでいきます。このためオルゴールはスイスで発展していきます。1810年代、スイスのサン・クロワ地方にニコール・フレール社、メルモド・フレール社などシリンダー・オルゴールの中心となるメーカーが誕生し、音楽を演奏する装置としてのオルゴールが生産されていきます。

Update Mar. 2009

 
 
     
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オルゴールの小さな博物館は2013年5月15日をもって閉館しました。

Our Museum has closed its doors on May 15, 2013.