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櫛歯の作り方

スイスの高級オルゴールといえば、リュージュ社。

ファイル 431-1.gif

その日本代理店がリュージュ販売株式会社です。
昨年の暮れにリュージュ販売さんからシリンダーの部品を貸してもらいました。
9月に行われていた『2011オルゴールフェスティバル(日本橋三越)』で展示されていたのを羨ましそうに見ていたら貸してくれました。

今日はその中から「櫛歯*1の作り方」を紹介します。

ファイル 431-2.gif (裏から見たところです。)

左から製造過程順に並んでいます。

一番左は形成されたスチール(鋼鉄)の板です。櫛歯を固定するためのネジ止め用のアナと、オモリを付けるための台などが形成されています。

左から2番目は切り込みを入れたところ。
櫛歯の1本1本が音を出し、長い方が低い音、短い方が高い音となります。
櫛歯はピアノのようにドレミファと順番に並んでいるのではなく、曲によって配列が異なります。
切り目を入れ長さがを替えていますが、この段階では調律は完了していません。

左から3番目は焼入(やきいれ)をしたところ。
画像ではわかりにくいのですが、色が黒っぽくなっています。
切り目を入れた櫛歯を800度の釜に入れ、その後常温の油に浸けて急冷させることを繰り返すのが焼入です。
焼入を行うことで硬度が増し、繊細な音色の基になるそうです。
焼入が終わったら研磨します。
 
 

ファイル 431-3.gif

左から4番目、何かがモコッとついています。
重厚な低音を出すためと、調律がしやすいようにつけた鉛です。

 
 
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左から5番目、その鉛を研磨して、一本ずつの音程を決定した後、ダンパーとなる透明な樹脂を貼り付けます。
櫛歯は一度弾かれると振動を続けますが、振動中の歯に金属のピンが触れると、ジッという雑音(ダンパーノイズ)が生じます。
まずダンパーがシリンダーのピンに押し上げられ櫛歯の振動を止め、その後、櫛歯が弾かれる仕組みです。

 
 
ファイル 431-5.gif

左から6番目が完成した櫛歯です。
ダンパーを櫛歯の長さに合わせて切りそろえます。

オルゴールにセットされているときは見えないので、様々に工夫された櫛歯の裏を見て驚く方が多くいらっしゃいます。
1796年、金属の棒を弾いて音を出すオルゴールが誕生して以来、改良が重ねられて1830年代には既に櫛歯の性能は頂点に達していたように思えます。

現在、公開中の1840年頃に作られたエクスプレッシヴ・シリンダーが鳴り出すと、ドーンという低音に驚かされます。

*1:櫛歯:オルゴールの音源となる部分。鋼鉄の板に切り目を入れ、調律して製作する。髪をとかす櫛に形状が似ているためにこの名が付いた。