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【新入りの大きな発見(6)】 この曲の再生速度、遅くないですか?

私:「なんだかこの曲のテンポ、ゆっくり過ぎませんか?」
マネージャー:「そうですか」

すると、曲のテンポを調整するレバーを動かして、
シリンダーの回転数を上げ、再生速度を早めてくれた。

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私:「う~ん。やっぱりまだゆっくりですよ」
マネージャー:「えぇ、だってこのレバーを見てもわかる通り、これでも早い方だよ」

このときも、納得のいかない顔で
マネージャーを見てしまったのである。

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すると、マネージャーが再び口を開いた。
「だって、100年前の人たちが聞いていたものですよ。
当時はもっとゆっくり時間が流れていたんだから」

私:「うわぁ~」

私は失礼を顧みずに、
オルゴールの前で
しかも上司に向かってついつい叫んでしまった。

不覚にも、私は自分の勝手な時間感覚で、
オルゴールと向き合い、演奏を聴いていたのだ。

目の前にある機械は、
100年以上も前に作られたものばかり。
言わずもがな、当時と現代とでは時間の流れが違う。

そういえば、以前から横に並んで一緒に道を歩いていると、
「ちょっと、歩くの早いよ」
なんてしばしば言われていることを思い出した。

さらに、とりたてて急いでもないのに、
信号がチカチカすれば、なぜか走り出す。
エスカレーターもなぜか右側を駆けていく。

要するに、私の生活スタイルは、
現代人のせっかちを代表しているのである。

”仕事はテキパキ正確で、丁寧に。
オルゴールを扱うときは、100年前の時間感覚に”
こんなスローガンを自分に掲げようと思った。

ついでに、1Fホールにあるオルゴールの中で、
速度調整用のレバーが付いている機種を見て回った。
主にディスクオルゴールで確認できた。

ファイル 553-3.jpg ファイル 553-4.jpg

すると、今はどのレバーも"SLOW"に傾いていた。
これらは、とくに遅いと感じることはない。

これまた気になって、なぜだか聞いてみた。
ゼンマイの巻き具合などオルゴールの性質に加えて、
テンポがゆっくりなクリスマスや讃美歌の曲が
多くあることに由来しているようだ。

変わらない時間の流れと、変わる時間感覚。
ふと、クリスマスカードや年賀状が頭をよぎった。
今年もキーボードではなく、手書きにしようと思う。

(新)

【新入りの大きな発見(5)】 オルゴールは、お肌の乾燥を気にするのか (つづき)

新入りの勝手な思い込みかも知れないが、
いろいろな機種に囲まれていると、
ツヤのあるオルゴールには見とれてしまうし、
ちょっと乾いているような印象を受けると心配になる。

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もちろん、100年、いやそれ以上の時を経ているので、
「時間の経過」と言ってしまえば、それまでだ。

最近、湿度が40%を切るようになった。
各階の加湿器は、フル稼働である。
夏には除湿もするので、湿度変化の激しさは、
ヨーロッパ育ちのお肌にはちょっと負担かも知れない。

ここで話題にしたいのが、オルゴールのお肌ケア。
最近、私は毎日保湿クリームを塗らないと、
肌がごわごわして、一日を過ごせなくなった。

木製の家具と同じような要領でケアが施される。
当館には、しっかりとワックスグッズなるものが用意されている。
その主なものが、「蜜蝋ワックス」である。

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「本当に薄く塗ってね」

との注意をしっかり受けて、
スポンジの先にワックスを軽く乗っけて、
表面に薄くなじませていく。

それから、布でムラのないように伸ばして、
余分なワックスを拭き取る。

劇的な変化はもちろんないが、
ごわごわした緊張感のある質感から、
しっとりとしたやさしい質感に変わっていくのが感じられた。

目の前の機種にはじめて蜜蝋ワックスを塗らせてもらった愛着からか、
生き生きしてくれているような感覚にもなった。

ファイル 552-3.jpg

「ジュースでも、飲みませんか?」
今日も先輩が差し入れのフルーツミックスジュースを持ってきてくれた。
コップに注いで、子どもみたいにゴクゴク飲み干した。

「なんだか、ジュースの体に染みこんでいく感じが、
蜜蝋を塗ったとき感覚に似ているのは気のせいでしょうか」

なんてくだらない冗談を先輩方にかましてしまった。
一応笑って流してくれたので、少なからず共感してくれたのかも知れない。

こちらの感覚も勝手な思い込みでないことを祈りたい。

(新)

【新入りの大きな発見(4)】 オルゴールは、お肌の乾燥を気にするのか

コメントを頂いた方、ありがとうございます。
返事が遅れてしまって、失礼いたしました。

それでは、本日の投稿も少しだけお付き合いください。

秋は終わった。
今朝の東京は5.7度まで下がり、冬本番が始まろうとしている。
蝉の短命にも似たキンモクセイの芳香は、鼻をクンクンしてもとっくにダメ。
だけど、新入りの嗅覚は相変わらず敏感である。

そういえば、最近、肌がかさついたり、
指先のささむくれが、気になりだした。
ハリはないが突っ張るし、ささむくれも気持ち悪い。
この感覚は、湿度計にも現れている。
館内の湿度は、最近、40~45%くらいで推移している。

新入りの私にとって、
この湿度チェックも勉強の種になる。

朝のお掃除は、湿度計チェックも兼ねる。
毎朝、指定の表に数値を書き入れるのだ。
そんな私はベテランスタッフに、
オルゴールの快適な湿度を尋ねたことがある。

すると、
「オルゴールは、人間が快適だと感じる湿度と同じだよ」

と教えてくれた。

ふむふむ、なるほど。
では、いつもオルゴールが快適であるために、
何を心がけている、というのか。
保湿クリームなんかは存在するのだろうか。

人と同じように文明の利器に頼るのである。
夏になれば、エアコンの除湿モードが活躍し、
冬になれば、加湿器をたいて、水分を適度に保つ。

入館者が増えれば、その都度調整する。
スタッフに求められるきめ細かい心遣いを学んだ。
先日も多くの来館者をお迎えし、湿度の急な上昇に驚いたところである。
70%近くに上がった。

でも、気になる。
人と同じように、オルゴールの数だけ個性がある。
急な湿度変化で木は割れ出しそうだし、金属はサビによる浸食が心配だ。
何か、特別なケアも存在するのだろうか。

だってこの時期は、加湿器を炊いても、
一度肌が突っ張ると、なかなか解消しないし、
一度ささくれると、どこまでも痛いから。

つづく

(新)

【新入りの大きな発見(3)】 あの人は幻だったのか。

プルップルップルップルッ、プルップルップルップルッ、ではない。
プルルルルル、プルルルルル、である。
“プ”が多い前者は内線電話で、“ル”が連続する後者は外線電話。

1Fの受付を1人で任されるようになった私にとって、
“プ”が多い内線電話が自分のところで鳴るたび、
「何かまたミスをしたのではないか」と不安になる。
でも、昨日の朝は外線電話がひっきりなしに掛かっていたので、安心だった。
私のために内線を使っている暇など微塵もないからだ。

それもそのはずで、クリスマスコンサートの予約が始まった。
先輩たちは、朝から臨戦態勢。
5Fの電話機も延長コードでつなげて、
4Fの事務所に直接持ってきてしまう異例の事態である。
非常階段には黒い電話線が、重力に抗うことなく垂れ下がっていた。

私は先輩の苦労を尻目にして、
いつもの朝を過ごそうとしていた。
自分の持ち場である1Fレジへ呑気に下りていった。

10:50ごろ。
私は完全に安心し切っていた。
このとき、“頭のゼンマイ”もまだ巻かれていない。

ひとりの男性が、入り口のドアを開けて中に入って来た。
「今日の午前中は博物館コースがないのに・・・・・」と
頭に浮かんだが、お断りの文言を考える間もなかった。

2Fのショップから先輩が階段で下りてきた。
なぜだか妙にかしこまっている。
先輩は、私を見た。

入ってきた男性が口を開いた。
「君が、新しく入った子だね。ブログを読んだよ」

館長だった。
初めてだった。

パンフレット記載の館長コース*1の説明を思い出した。
一体どんな人物なのか、不思議に思わないわけがない。

朝の掃除で、7F応接室の机の上のモノが微妙に動いていることは確認していた。
足を運んでいるとは推測していたのだが、現実に会えるとやっぱりうれしい。

先輩が予約を取っている間、
またしても、“大きな発見”をしてしまったのである。

プルップルップルップルッ、プルップルップルップルッ。
“プ“が多くなった。
午後からは、また内線電話が鳴った。

そういえば、館長はあれから一向に降りて来なかった。
やっぱり幻だったのか。
「社員通用口から帰って行ったよ」と先輩が教えてくれた。
次はもう少し話してみたい。

(新)

*1:「オルゴールの収集家であり研究家の館長が博物館をご紹介します。
特別展示室へはこのコースのみ。時間無制限。マニア向け。」と書いてある

コメント一覧

vert (11/17 16:46) 編集・削除

新人さんがんばってますね!
文章お上手で、本を読んでいるようです
クリスマスはサンタクロースになって、がんばってください

新入り (11/17 22:32) 編集・削除

ありがとうございます。
コメントをいただけると、とても励みになります。
何か気になるテーマがありましたら、お申し付けください。
リクエストをお待ちしております。

【新入りの大きな発見(2)】  ゼンマイの巻く回数は機種によって決まっているのか

「マルチフォンって、何回ゼンマイを巻けばいいんですか」

1Fレジの横には黒くて大きな蓄音機がある。
目の前のガラスを覗いてみると、
青くて丸太い筒(蝋管型)が観覧車みたいに連なっている。

ファイル 541-1.jpg ファイル 541-2.jpg

手前の鉄の小さなハンドルをぐるぐる回すと、
蓄音機の中で、”観覧車”が動き出す。
時計の針を手動で合わせるように、
聞きたい番号を針にちょっとずらして持って行く。

レジ係のとき、お客さんが来ない間にこっそりと、
少しだけ回したときがあった。

ファイル 541-3.jpg

だけど、正面右の大きめのゼンマイのハンドルだけは
切れてしまうのではないか、
と不安になって、こっそり巻くのがためらわれた。

そこで、先輩にゼンマイの巻く回数を聞いてみたのである。

ちなみに、私は先輩に早く追いつこうと、
他のオルゴールの巻く回数もいくつか聞いて、
メモしてしまおうと欲張るつもりだった。

だが・・・・

「う~ん、何回かははっきりとは言えないよ。
前の人がたくさん巻いていたかもしれないし、
巻いてなかったかもしれない。
何よりも機種によって硬さも違うし。。
自分でゼンマイを巻いてみて、
ちょうどいいところを覚えていくしかないんですよ」

先輩は手慣れた手つきで、
マルチフォンのゼンマイを巻いて見せてくれた。

「こんな感じです」

と、経験ありきの世界を思い知った。

「うわぁ~、なんだか人みたいだ」
と心の中で私はつぶやいた。

オルゴールは人との出会いと同じように
思いやりをもって接することをを学んだ。
名前を覚えて、特徴をとらえる。
まるで、初めて出会う人との信頼関係を築くように。

が、

「オルゴールはね、新人が動かすと舐められることがあるんだよ」

マネージャーの言葉が、頭をよぎった。
オルゴールとの向き合い方を学んだのもつかの間。
さて、”舐められる”とはいったい何なのか。
きたる洗礼の日に備えて、ひとまず待つことにしようと思う。

(新)

【新入りの大きな発見(1)】  小さな博物館で見つける”大きな”発見

今秋から入った新入り職員です。

これから、「新入りの大きな発見」と題して、
ブログを更新していきたいと思います。

博物館にお越しになる方の手助けがほんの少しでも出来れば、
と願っているのですが、
今は仕事を覚えるのに必死で、ついつい顔がこわばってしまいます。
それでも、不器用な私を懲りずに先輩方が支えてくれます。

ホームページに足を運んで下さる方々のお力添えをいただきながら、
成長していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします!

私は新人なので、
このブログをご覧になっている方よりも、
オルゴールの知識も経験も、未熟です。

来館者でもなく、コレクターでもなく、
マニアでもなく、ベテラン職員でもなく、

博物館の内側にいる新入り職員が
オルゴールの小さな博物館で見つけた「発見」こそ
書くに足りうる内容だと信じて、伝えていきたいと思います。

つたない文章が続くこともあるかもしれませんが、
小さな博物館で見つけた大きな発見に
あしからずお付き合いいただければ幸いです。

(新)

コメント一覧

ちゅうさん (11/09 10:15) 編集・削除

頑張れ新人さん(^◇^)
期待してますよ~!!

近いうちに博物館でお逢いできるのを楽しみにしています☆

新入り (11/17 22:36) 編集・削除

ちゅうさん、コメントありがとうございます。
最初にコメントをいただけて、とてもうれしかったです。
2回目以降の気持ちの入り方が違いました。
今後の投稿でも、気になることがありましたら、コメントお待ちしております。

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